ブラック業界のビジネスモデル分析をしてみる。【SIer】
被雇用者ならば、転職・独立を視野に入れるべき。
はろー、yukiです。
世の中には様々なビジネスモデルがありますが、参考にされるのは当然、成功している企業(モデル )です。
ですが、多くの人はそういった企業に所属せず、一般的に「ブラック」と呼ばれる企業で働いている人もいます。
なぜ、「ブラック」なのでしょうか。
残業代未払い、過労、モラルに反する業務、消極的な福利厚生など、理由は多種多様ですが、
大事なことは、それらを招くようなモデルが存在していることではないでしょうか。
そこで、今回から『ビジネスモデル分析』と題し、世の中で「ブラック」と分類されがちな業種を取り上げ、そこで採用されているモデルについて考察してみたいと思います。
まず、初回となる今回は【SIer】を取り上げます。
※SIer...いわゆるIT派遣業
1. 業務プロセス
SIerの業務は、大まかに下図のようになっています。
他業種(飲食、小売りなど)からIT業界へ転職しようとする人材を雇用した後、短期間においてIT技術を習得させます。
雇用する人材は大卒が多く、その理由は大学に入るくらいの学習能力があると判断されるためでしょう。
学ぶIT技術は、資格がベースとなります。
国家試験・民間試験を問わず、簡単なものから合格させ、後に案件へアサインする際の履歴書に追記します。
案件へのアサインは、学んだ内容と関係ない業務であることが当然のようにあります。
業務歴の短い人材は、IT技術を問われる業務より、単純労働・雑務(オペレータやテスターなど)のために採用されます。
案件は短くとも1年ごとの契約更新となっており、継続しない場合、その案件での経験が履歴書に追記され、別の案件へアサインされます。
つまり、雇用者は案件へのアサインと履歴書の更新を繰り返し、キャリアを積んでいくことになります。
また、案件終了時、請負先の企業へ人件費を請求します。
2. 問題点
業務プロセスから考えられる問題点は下図のようになります。
まず、IT業界の人材であっても、ITのバックグラウンドは不要です。
独学の有無もあまり関係ありません。
それゆえに、「未経験可」で募集し、採用した後は試用期間の範囲内で資格勉強をさせます。
入社前に資格取得しても、業務歴がないため、前述したとおり技術を問われる業務へはアサインされません。
会社規模が小さい場合、1-2次請けはできません。
その会社よりも大きな会社へアサインされ、その会社から請負先へ出向することになります。
これが「多重請負」の実態です。
3. ブラック化する理由
明示化した問題点から、なぜ「ブラック」へのプロセスを歩むのかを考えます。
「未経験」かつ「資格保有のみ」といった人材には技術力がありません。
技術力のない人材は、業界では「安い人材」となり、単純作業・雑務などの技術より体力の求められる業務へアサインされます。
また、「安い人材」は給与も低額で済むため、利益を上げやすいです。
ひと月当たり100万円の案件に、月給20万円の人材をアサインすると、80万円の利益になります。
ただ、実質は「多重請負」において中間マージンが発生するため、80万円の利益から50万円が抜かれ、最終的な利益が30万円になることがあります。
すなわち年間360万円の利益となります。
※実際はもっと少額なので、あなたの給与に想定利益を足し、計算すると大まかな案件の売り上げが出せるのではないでしょうか。
人件費が安いほど利益を上げられる仕組みはどこの企業でも同じですが、「多重請負」ではそれがシンプルな構造になっていることが分かります。
さて、【SIer】のコアとなっている請負システムですが、このシステムこそが「ブラック」のプロセスに陥るか否かの重要なスポットになっています。
「多重請負」では、自分が所属する会社の名刺が不要です。
親会社とは元請け(あるいは一次請け)程度が会社間の関係を築くことができますが、それ以下は社名が関係ありません。
つまり、会社の代表として出向したつもりが、別会社の人材として扱われることになります。
これは派遣業にも見られることで、結果的に自社への帰属意識が薄れます。
また、出向先で得た技術が自社へ還元されることはほとんどありません。
なぜなら、自社で技術を蓄積する時間より、次の案件へアサインされることが優先されるためです。
(アサインできない人材は、不良在庫に等しい)
自社への帰属意識を失った人材は転職します。
この時、その人材が持っている技術もなくなります。
そして、再び人材(商材)を確保するフェーズに戻ります。
4. まとめ
これまでみてきた内容をまとめると下記になります。
a.) 会社は別事業でマネタイズする
人材の入れ替わりは初期であれば対応できますが、離職率が高まれば難しくなります。
また、人材が確保できなくなると、【SIer】のビジネスモデルは崩壊します。
よって、請負システム以外に収益を得る必要があります。
具体的には、案件を終えて技術を習得した人材を、短期間だけ自社に留め、技術内容を自社へ還元させる仕組みを導入します。
この時、その人材へ有給取得を促したり、社内交流させるのも一つでしょう。
蓄積された技術内容は資産となり、自社開発に活用できます。
※現に過去SIerだった企業が自社サービスを開発し、それが本業となっているケースはあります。
b.) 被雇用者はそもそも帰属意識を持たない
経験は被雇用者特有のものなので、会社よりも個人のキャリアを優先する方が利巧です。
体力より技術を求められる業務を経験するには時間がかかるでしょう。
ですが、取得した資格も被雇用者のものに間違いはありません。
上流のSIer、自社開発しているIT企業、別業界の社内SEなど待遇の良い職場へ転職(あるいは独立)する目的を、常に持つのが良いと思います。
そのモチベーションは、技術やそれ以外(様々な業務)の習得にもつながるでしょう。
そもそもこのビジネスモデルは、人材よりも利益を優先していることが明らかに分かってしまうので、人材募集の段階で「ブラック」かどうかは判断できますよね。
以上。