【2018年】中国のスタートアップに学ぶビジネスモデル【起業】
土地柄による影響って意外と大きい。
はろー、yukiです。
アメリカ以外の国からスタートアップを取り上げる記事。
今回は北欧(デンマーク、エストニア)に続き、中国の香港の中から紹介します。
香港は元々イギリス領で、1997年に中国へ返還されました。
中国でありながら、特別行政区として自治を認められており(通貨が香港ドルという点でもかなり高度な自治)、社会主義ではなく資本主義の地区となっています。
主要産業は、金融業,不動産業,観光業,貿易業で、電気機械、電子・電荷製品製品が主な輸出品目。
経済的な観点におけるポイントは、法人税16.5%,個人所得税最高税率15%という税率の低さに加え(日本は法人税が23.4%、個人所得税最高税率が45%)、キャピタルゲイン利子非課税が投資家にとって大きなメリットとなっていることにあります(日本の株式譲渡益にかかる税率は20%)。
とてもビジネスのしやすい環境が創出されており、金融業が栄えるのもうなづけますね。
さて、今回は6社取り上げました。順番に見ていきましょう。
Qupital
社債(インボイス:請求書)売買のデジタル取引市場を提供するスタートアップ。
売り手がインボイスをアップロードし、資金提供者がそれを入札する仕組み。
顧客から売り手へ送金された後、資金提供者は利益が加算されたリターンを手にする。
創業者はAndy Chanで、2016年に設立された。
サービス
インボイスに付加される金額(買い手にとってのリターン)は多様な資金提供者の中で価格競争が発生する。よって、インボイスの売り手(企業)は最低値を手に入れやすい。
また、インボイスが競売にかけられるプロセスや融資のルールが全て明らかにされた状態で売り手は決定できる。インボイスをアップロードしてから3営業日のうちにキャッシュが手に入るのも大きなポイント。
買い手(資金提供者)にとっては、資金提供額(売掛金)から5-18%増でリターンされるのがメリットとなる。
取引される債権は30-90日間の投資サイクルとなっており、流動性が高い。また、関連書類や取引のプロセスも調べることができるため、透明性も確保されている。
考察
様々な投資商品がある中で、同社が取り扱うインボイス(日本では売掛債権と言う)は30-90日間と比較的短期の性質を持つ。
例えば、株式取引でも短期や中長期のスタンスを持った投資者がいるが、短期的な株価の値動きはリスクとして捉えられている。
インボイスではそうした急騰の可能性がなく(あらかじめ価格が高いことは当然ある)、リスクはインボイスを競売にかける企業が確実に資金を回収できるかどうかにある(債権がファンドに集約されていないがゆえ、投資先を個別に判断することになる)。
投資者はインボイスが作られる内容と、その内容を受け取る顧客についてリサーチすれば良い。
売り手である企業にしてみれば、銀行などの金融機関からの融資以外に短期的な資金提供を受けられる点が大きなメリットとなっている。
つまり、機関が持つ基準ではなく、投資者たちが持つ独自の尺度によって各債権が判断されるということだ。
企業と個人が取引しやすいサービスにより、資金の流れが活発になっている。
8 Securities
香港ドルや元とドル間での株式取引を手数料フリーで提供するスタートアップ。
香港と日本で営業許可を得ており、中国語・日本語・英語に対応している(ただし日本円は取り扱っていない。日本にオフィスがある)。
サービスはAIによるアドバイスやモバイルファーストを取り入れたものとなっている。
創業者はMathias HelleuとMikaal Abdullaで、2010年に設立された。
ミッションは『to use technology to make growing your money simpler, smarter and more affordable』。
サービス
アプリ「Tradeflix」がiOSとAndroidから提供されている。
アメリカ株、香港株、H株(中国本土で登記している)にある15000もの銘柄やETFに投資できる。
Chloeと呼ばれるロボットアドバイザーが設定金額に至るまでの投資サポートを行う。
投資金額は1000香港ドルからで、30ヵ国、40セクター、2000銘柄の中からポートフォリオを組んでくれる。
2017年11月度のポートフォリオの実績は、積極的・ほどほど・堅実の3つに分けられ、それぞれ14.87%・11.58%・8.04%の利益を上げている。
考察
手数料フリーのサービスはアメリカのスタートアップにもあり、過去に記事で紹介(Robinhood)した。
同社はその点に加え、AI(ロボット)によるポートフォリオ作成があり、そのポートフォリオは確実に利益を出している。
では同社がどのように利益を出しているかというと、二つある。
まず、積極的な投資者に向けてマージンを乗せた融資サービスを始める予定だ。次に、ユーザの預金から少額の利率分の収入を得る。
ユーザが投資で得た利益からは収入を得ない方針だ。
過去に紹介した企業(Robinhood)は積極的な投資者からサービスの利用料を得るものだったのに対し、同社は積極的な投資者が欲する資金に着目し、そこを収入源とした点が優れている。
WeLab
モバイル端末上のクレジットサービスを提供するスタートアップ。
「WeLend」が最初のプロダクトであり、香港で最初のオンライン融資プラットフォームとなった。
その後、「Wolaidai(我来贷)」を中国全土に展開している。
金融とテクノロジーの専門家たちにより、2013年に設立された。創業者はSimon Loong。
サービス
「WeLend」では、5000-600,000香港ドルの融資を受けることができ、返済期間は14日から60ヶ月に設定できる。金利については融資額と返済期間を入力後、AIによりリアルタイムに計算され、オンライン上で確認できる。
「Wolaidai(我来贷)」では、アプリを使用して融資を申請する。融資金額は3000-5000元で、返済期間は3,6,9,12ヶ月から選べる。月利は0.78%。
考察
現在(2017年12月)、1香港ドルは14.4円で、1元は17.0円となっている。
つまり、「WeLend」では72,000-8,640,000円で、「Wolaidai(我来贷)」では51,000-85,000円の融資を受けられる。
香港向けの「WeLend」は高額融資も対象となっているのに対し、中国全土向けの「Wolaidai(我来贷)」は融資金額の幅が狭く低額だ。
「Wolaidai(我来贷)」の場合、貧富の差が激しいことから返済能力の高くない人もサービスの対象に含まれていることが考えられる(多くの貸し倒れを防ぐ)。
逆に、資本主義として開かれた市場の香港では、比較的裕福な人が多い。よって、高額融資も可能となっている(ローンに積極的な利用者を逃さない)。
対象地域に合わせたサービス展開をすることで、同社は市場を勝ち取った。
Ambi Labs
AIを用いた空調設備を提供するスタートアップ。
同社のエアコン(空調)はIoTデバイスと接続されており、気候の変化に合わせて調整したり、外出の際に節約する機能が自動で作動する。
創業者はJulian LeeとPaul Sykes、Mathis Antonyで、2012年に設立された。
サービス
現在(2017年12月)販売されているのが、「Ambi Climate 2nd Edition」で、価格は129ドル。AIによる空調の自動調整のほか、使用者にとって快適な空間をAIが学習する。
また、スマートホームと接続(IoT)したり、AndroidやiOSからアクセス(操作や使用履歴確認など)できるため、より便利な使用感を得られる。
考察
便利なエアコンとは、天候や部屋の湿度、人の数などに合わせて温度・風速調整するものを言うだろう。
それらは既存のエアコンでも備わっている機能で、使用者が自ら設定を変えることもあれば自動で調整するものもある。
ただし、それらはあらかじめエアコンに設定された機能で、あくまで“人”にとって快適な空間を生むものにすぎない。
同社の場合はAIを取り入れることで、“人”ではなく“使用者”という個人の使用に焦点を当てることに成功した。
また、スマートハウスやIoTが基本となる家屋が設計されるようになった場合、当然エアコンは必須の設備だ。
それらがまだ先進的とされる現段階にビジネスを始めることで、同社はパイオニアの位置を得ようとしている。
Oddup
Oddup | Most Trusted Startup Rating System | UnicornHunt
投資先としてのスタートアップ企業の分析情報を提供するスタートアップ。
得られる情報は、格付け評価、査定内容、アナリストによるコメントなど。
対象となるスタートアップ企業は、アジア太平洋を中心に10ヵ国中16主要都市の中から取り上げられている。
創業者はJames Gianottiで、2015年に設立された。
サービス
提供される情報は「Startups」と「Investors」の二つに分かれている。
「Startups」では、業種や所在地、従業員数、設立年、評価額、資金等の情報が手に入る。
「Investors」では、ベンチャーキャピタルを中心とした投資者のポートフォリオや投資先企業・市場、投資最高額・最低額などが分かる。
会員登録をすることでより詳細な情報が得られ、スタートアップ企業の場合は月額49ドル、投資者の場合は月額99ドルかかる。
考察
株式投資のような金融マーケットにおいては情報が何よりも重要だ。
特に、スタートアップのような未公開株については投資に大きなリスクが伴う。
そうしたリスクを取り払うためには、透明性が確保されていなければならない。
投資者にとって投資をしやすい環境は、逆に企業にとって投資をされやすい状況を生む。
同社のサービスは、エコシステムを活性化させ、スタートアップがもたらすイノベーションを発生しやすくしている。(ただし、月額の料金から投資のビギナーを対象としていないことが分かるので、サービス利用者は限られている)
Spottly
写真ベースの旅行ガイドサービスを提供するスタートアップ。
ユーザは写真やビデオを見て旅行のプランを立てられる。
InstagramやTripAdvisor、Foursquare、Yelpなど他のサービスと連携している。
創業者はEdyn Chanで、2014年に設立された。
サービス
スマートフォンのアプリが提供されている。
アプリでは、写真や動画を見ながら、旅行計画を立てられ、行き先を選ぶと人気の場所を写真で示してくれる。
写真やビデオは100万件以上あり、それらはSpottlyコミュニティとInstagramの旅行キュレータによって厳選されたものとなっている。
会社HPは現在(2017年12月)公開されておらず、App StoreやGoogle Playにてサービスの内容を確認できる。
Twitterでの活動もあるが、LinkedInの情報から社員数が1-10名と少数のため、全体的に自社ブランドの告知を十分に取り組む余力がないとみえる。
考察
旅先の観光スポットやホテルを探す際、気にするのが価格や他ユーザの評価だろう。
そのため、それらの情報をメインとしたサービスは数多い。
しかし、同社の場合、他ユーザが良いと感じたものが写真や動画として共有されるため、よりリアリティのあるサービスとなっている。
また、住所や評価を探す手間がかからない点がアピールポイントとなっている。
Amazonなど(Youtuberも)でも使用動画を乗せることで、使用感にリアリティを持たせられているように、同社は世の中の人々が求める情報を適切な形で届けることに成功した。
総括
今回紹介したスタートアップの中から特に金融系に着目すると、非常に発展した金融サービスが見えてきますね。
香港は金融が発展している都市というのも分かります。金融を中心に栄えたからこそ、金融系のスタートアップが誕生しやすい環境もあったのでしょう。
そう考えていくと、前回の北欧のスタートアップを取り上げた際にも書いたと思いますが、スタートアップないしイノベーションはその土地柄(環境や文化、人柄など)に合わせたものが発展しやすいのだと思います。
確かに、今回取り上げた企業の中でも、ITやファイナンスの専門職として活躍した人がメンバーに加わっているところがありました。人材流動の観点からも、そうしたことは言えそうですね。
日本の場合、スタートアップは聞きなれませんし、ベンチャー企業と言えば東京で誕生することが多い印象です(新興企業は皆スタートアップなので名乗り方の違いに過ぎない)。
確かに、郊外で新規に起業するとなれば、不動産や飲食、保険代理などになりますので、ITや金融、ヘルスケアといった分野とは程遠いかもしれません(田舎にあるITと言えばWeb製作くらいのもの)。
でも、日本の田舎で廃れていくものの中には、外国人によって再発見されるものもあります。
起業とは言わないまでも、副業(サイドビジネス)くらいのスタンスで、生まれ育った土地の何かを題材にしてビジネスを始めてみるのも良い趣味で、楽しいかもしれませんね。
以上。