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【2018年】アメリカのスタートアップに学ぶビジネスモデル【起業】

現実世界が少しずつ変わると、革命が起きていることに気づかない。

 

はろー、yukiです。

 

アメリカにあるスタートアップ企業を取り上げ、紹介する記事はこれで3年目です。

僕は企業を取り上げる際にキーワードを考えます。2016年「スピード」と「体験」。2017年は「習慣をより豊かに」と「無駄なお金」でした。

詳細を知りたい方はリンク先の記事を読んでください。今年のキーワードは例年のごとく、記事の最後に書きましたので、知りたい方はそちらへどうぞ。

 

さて、今回は2018年に注目しておきたいスタートアップを5社紹介します。

2017年、日本の経済は日経平均の2万2000円越え、政治は北朝鮮のミサイル問題がありましたね。ビジネスでは新規上場企業を見ていると、マザーズ市場ではAIを扱う企業が多かったように思います。

大企業もIoTに力を入れていて、少し前までバズワードに過ぎなかった事柄が実現されるレベルになっていることに気づきます。「○○x IT」という表現も懐かしいですね。

都心部では当然のようにフィットネスクラブに通う人がいて、「健康」への取り組みは趣味と同じくらいに会話の材料になりますよね。

 

それでは一つずつみていきましょう。

 

Nurx

Nurxは避妊の方法とPrEPを提供するスタートアップ。

PrEPはPre-Exposure Prophylaxisの略で、HIVの予防法の一種。Nurxでは、HIV陰性の人が1日1回ピルを服用することでHIV感染を防げることを指す。

服用するピルは同社で製造しておらず、FDA(Food and Drug Administration:アメリカ食品医薬品局)が認めたTRUVADA社製のものを提供している。

創業者はHans GangeskarとEdvard Engesaeth。Edvard Engesaethはドクター(医者)でもある。サンフランシスコに拠点を構え、全米にサービスを展開している。

 

ミッションは『putting you in control of your own health』。

 

【サービス】

Nurxを利用するメリットは2つある。1つ目は病院へ行って医者に直接会う必要がないこと。2つ目に保険加入の有無を問われないことだ。

サービスの利用は簡単で、アンケートに答えた後、その内容をPurxに所属している医師が確認する。利用者は配送料を支払うことなく、時間通りにピルを手に入れられる。

サービス料は1ヶ月15ドルとなっている。

Nurxの医師は各州におり、利用者は自分の住む州の医師とやり取りをすることとなる。また、NurxはHIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996:医療保険の携行性と責任に関する法律)に準拠しており、アンケート等で得た個人情報の厳守に努める。

 

【考察】

HIV感染やAIDSといった性病への意識は、身近でなければ薄い。これは身内に癌を患った人がいるか、いないかという経験の有無と似ている

NurxのサービスはWebサイトを見て明らかのように女性向けだ。パートナーが性病にかかっている場合を想像するのは普通の発想だが、その他にも性サービスに従する人やレイプ、望まないSEXの被害に遭った人も同サービスの利用者になり得る。さらには、HIVへの感染リスクは男性同士の性交で高く表れているように、男性もサービスの対象者に含まれる。

アメリカでは医療コストが非常に高い。その中でHIVと向き合っていくには多くの資金が必要とされるが、そうした状況を1ヶ月15ドルまで敷居を下げることに同社は成功した。

 

Nurxのブログはこちら

 

Brandless

https://brandless.com/

 

Brandlessは食料品や生活用品、キッチン用品、美容品などを均一3ドルで販売するスタートアップ。

Blandlessの名の通り、上記のような消費物に関してブランドを意識しない人をターゲットとしている。

創業者はTina SharkeyとIdo Leffler。サンフランシスコを拠点に、2017年からサービスを開始した。

 

ミッションは『deeply rooted in quality, transparency, and community-driven values. Better stuff, fewer dollars』

 

【サービス】

サービスの利用法は基本的なEコマースと同じ。アカウントを作成し、欲しい商品をクリックして買い物かごに入れ、決済をするだけ。

商品価格がどれも3ドルという点が大きな特徴となっている。

 

【考察】

同社の造語に「BrandTax」というものがあり、消費者が既存のブランド品に対して潜在的に支払っている金銭のことをいう。分かりやすくいえば、商品ではなくブランドに金を払っているということだ。

同社の調べでは、同社の商品と同等の品質を持つ商品を比較した際、ブランドのある商品の方が40%も多く金を支払われる傾向にあった。

日本でも、PB(Private Brand:自社ブランド)やOEM(Original Equipment Manufacturer:商標受託製造)による商品が多く手に入れられるようになっている。それにより、明らかにブランドにお金を払っている感覚を覚える機会がある。同質のものがあれば、ブランドではなく安い方を買うのが今の日本の消費者心理だ。

そうした心理を活かしたビジネスを展開するのであれば、同社のように販売窓口をWebに限り、人件費を抑える必要がある。残りの課題は配送と管理費用、そしてWeb上におけるサービスの訴求力だろう。

 

Holberton School

Holberton Schoolはプログラミング教育を提供するスタートアップ。

Holberton Schoolの教育では、一般的な教員や講座を用いず、プログラミングで「どのようにして困難な課題を解決するか」といったプロジェクト中心の教育方法を採っている。

具体的には「Project-Based Learning」と「Peer Learning」といった方法論を採用している。「Project-Based Learning」では、現実世界での問題や挑戦を探す機会を学生に与え、コミュニケーションスキルや社会的スキル、リーダーシップスキルやクリエイティビティの獲得を促す。「Peer Learning」では、生徒間の相互のやり取りを通して、チームで課題を解決するための方法やクリエイティビティを身に着ける。

それらのメソッドは世界でトップの大学に用いられ、そうした大学の卒業生の中にはGoogleFacebookAppleUber、Dockerといった企業でソフトエンジニアとして活躍している人がいる。また、同社のスクールの生徒の中にはGoogleやLinkedIn、NASAに雇用された人もいる。

創業者はSylvain KalacheとJulien Barbierで、2人はTech企業の出身でもある。

 

ミッションは『to train the best software engineers』

 

【サービス】

学生は授業料を支払わず、卒業後の最初の3年間に入社した企業やインターンシップで得た給与から約17%を支払う。

メンターはTech企業で働く人が中心となっており、より実践的な内容を学ぶ機会を得られている。

スクールはサンフランシスコのダウンタウンに位置している。

 

【考察】

同社のスクールではスペシャリストよりも、フルスタックの能力を持つエンジニアを育てる。

カリキュラムを構成する内容は、Webのフロントとバックエンド、スクリプト、データベース、モバイル開発、IoT、人口知能、リバースエンジニアリング、セキュリティなど。また、アプリケーション開発での担当はコーディングだけでなく、書類作成、テスター、モニタリング、スケーリング、電話応対など様々。さらに、プロジェクトではユーザーインターフェースやユーザーエクスペリエンス、コミュニケーション、オンラインマーケティングなどについても学ぶ。

IT(特にソフトエンジニアリング)のスペシャリストを養成する機関に違いないが、重要なのは経験できるディレクションが多いということだ。

日本の多くの場合、Web系であればフロントエンドとバックエンドは別々に学ばれ、互いの分野は明確に分割される。そうした互いの作業の不理解がプロジェクトの失敗につながることもある。

同社の教育では、幅広いITスキルを身に着けられるので分野の敷居に対して柔軟に対応でき、プロジェクト志向の教育方針がチームで作業することの重要さを理解させる。

個人開発よりもチーム開発の重要性を理解している、すでに現場で活躍する多くのエンジニアから教えを得られる点も非常に大きな魅力となっている。

 

Holberton Schoolのブログはこちら

 

Crew

Crewはコミュニケーションソフトウェアを提供するスタートアップ。

サービスの利用者は飲食店や小売り、薬局、旅行業者、建設業者などの現場作業を職とする人を対象としている。

創業者はDanny LeffelとBroc Miramontesで、2015年にカリフォルニアで設立された。

 

【サービス】

スマートフォン用の無料アプリで、コミュニケーションを取り合うチームのメンバーの電話番号登録してサービスを開始する。

メッセージやスケジュール、タスクなどをUI上でカスタマイズでき、写真や動画の共有も可能。

 

【考察】

ビジネス向けのコミュニケーションツールやメッセンジャーアプリはSlack(過去記事を参照)が有名だが、そうしたサービスの対象者は暗にITやクリエイター職などのデスクワークの従業者を示している

Crewはデスクワークよりはむしろ、フィールドで作業を行う職を対象としている。それはウェイターやコーチ、警察官や消防士なども含んでいることから分かる。

似たようなサービスはすでに多くあり、同社のサービスが一番の利用者を獲得できるとは思わない。しかし、同社のサービスは次のようなことを考えさせる。

現存する様々なサービスの利用者は、実は似たような傾向をしていて、提供されるサービスも同様の傾向を持つ。すなわち、新規性が失われている。ただし、同社のサービスはその点に陥っていない。

例えばインターネット利用者の多くが若者を占めているとは限らず、中高年も大きな利用者層の一つとなっている(ただし、インターネット上の居場所が限られているため、若者の多くが利用するようなサービスにも中高年が現れることがある)。

同社が実現したターゲット設定は潜在顧客を目に見える形で明らかにした。これに倣えば、現存する様々なサービスにも幅を持たせられると思う。

 

Qadium

Qadium

 

Qadiumはセキュリティ製品「Expander」を提供するスタートアップ。

「Expander」は内部のネットワークと外部のネットワークのやり取りを可視化し、セキュリティリスクの分析を行う。

創業者はMatt KraningとShaun Maguire、Joe Meyerowitz、Tim Junio。4人はDARPA(Defense Advanced Research Projects Agency:アメリカ国防高等研究計画局)で出会い、2012年にQadiumを設立した。

 

【サービス】

Expanderはリアルタイムのスキャニング、電子資産の保護、継続的なモニタリング、報告などを提供する。

 

【考察】

同社はアメリカサイバー軍やアメリカ軍のサイバー部隊などと契約しており、同社のインターネットをモニタリングするプラットフォームは官民に提供されている。

セキュリティ製品はどの顧客に提供されているかが信頼の証となる。日本も将来的な治安は不安視されているため、インターネットに限らず、様々なセキュリティ製品に商機がある(東京オリンピックだけでなく、民泊業界の成長、外国人労働者の増加など)。

また、インターネットのようなデータのやり取りが目に見えにくい分野において、可視化の手段は有効だ。複雑な内容において可視化が 理解の手助けとなるように、多くの人が素直に「役立った」と思わせられる手段だ。

提供するサービスの重点に「可視化」を置くのも一つ。

 

 

総括

今回のピックアップは「専門職の多様な働き方」と「常識の変容」の2つがテーマでした。

・士業や専門職が活躍する場は一つではなく、高い敷居を少し下げるだけで提供できる範囲は広がる

・当たり前のことに安住してしまわず、違った角度から見えた景色を大事にする

 

これまでと異なった方法を選択するのは非常に難しいことです。

なぜなら、成功法を捨てるリスクを受容するから。

ですが、現状維持が緩やかな下降を描いているのと同じように、これまでと同じやり方では絶対に成功しません。

何事も少しずつマイナーチェンジする必要があるわけですね。

 

最近、日本の大企業が無残に散っていることが多い世の中ですが、大企業ほど組織重視で仕事をしなければいけないため、今回取り上げたスタートアップのような小組織には多様性の部分で勝てません。

(夢や安定を求めて入社した大企業の財務や技術に不正があったなんて笑えないですよね)

 

確かに大企業の多くには歴史や企業間のつながりがあるため、仕事がなくなることはありません。

しかし、実力の有無という観点に立てば、必ずしも大企業が優れているわけではありません。

多様性から遠い大企業だからこそ、最近の優秀な人(周りと少し違う考え方をしてしまう)を獲得するのはできない。

 

そんな「最近の優秀な人」は考え方が多様で、大小を問わず誰かにとっての世の中を変える力があると思います。僕はそんな人たちに期待したい。

 

以上。

 

 

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