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雪ん子パースペクティヴ

読むとちょっとタメになるエントリー。

なぜローカル経済から日本は甦るのか / 冨山 和彦 (PHP新書, 2014.6) を読んだ。

グローバリゼーションというより、アメリカナイズ。

 

はろー、yukiです。

 

今回ご紹介する本はこちら。

 

日本企業をグローバルとローカルという観点から論じています。

全6章の、総ページ数273。新書にしては、少し内容が多いでしょうか。

 

あらかじめ言っておきますが、本書の特徴はグローバルとローカルを中心にして、日本企業のあるべき姿を論じています。

ですので、現状の具体例によって量が多くなっているというよりは、追求すべき型に必要な条件や求められる姿を描くのにページが割かれています。

未就職の学生であれば、今後の自分の進路を考える参考図書になり得るでしょうが、会社勤めをされている方には少々理想論寄りに読めてしまうかもしれません。

 

よって、本書の評価は次の通り。

良いところ

1. グローバル・ローカルという視座を貫いた

 

良くないところ

1. 事例が少ない

2. 視座にこだわり過ぎて、実感が湧かない

3. ローカル企業の見方が実に甘い

4. グローバルではなく、アメリカナイズ

 

さて、3と4について記していきます。

まずは3。

本書はタイトルにあるように、ローカル経済を中心とし、章も3-5と3つにわたっています。おおよその内容は次のようになります。

3章:あなたの会社、市場をローカルに絞っても良いのでは?

4章:ローカルの中小企業、そこに勤める人たちと町

5章:ローカルの中小企業の会計基準と銀行の融資

 

その中でも4章では、「ブラック企業」について触れています。

序盤では日本企業は7割が中小企業だと述べられています。また、グローバル圏で活躍できる企業は残る3割の上位少数、残るはローカル圏に注力せよ、というのが本書のメッセージ。

ブラック企業」は全体からみればローカルに多いかもしれませんが、グローバルにも当然あるでしょう。

著者はグローバル圏で活躍する企業は、日本の大学以上の海外名門大学を出て、さらにその中から優秀な人物が働く組織だとしています。

個人の優秀さはどうであれ、その環境にも「ブラック企業」の要素は存在すると思います。

また、ローカル圏にある企業には、ホワイト企業も当然にあります。

つまり、「ブラック企業」を本書で語る必要はなかった言えます。

 

ただ、日本の大学を出ただけでは世界で戦っていけないという点については僕も同意。

なんだか、東大でさえアジアでのランクを下げたとか。

ちなみに、上記のランキングでは、研究内容や論文の引用回数が指標の一つとなっているそうです。

個人的には、大学のランキングなどより、若いうちに海外の現地に赴くことは大きな経験となりますので、おススメです(フィールドワークについて学んだことのある人は共感できるかと思います)。

 

 

次に、良くなかったところの4つ目。

本書の前半では、グローバル企業について書かれています。同時に、ベンチャー企業についても述べられています。

その中で出されている企業がこちら。

現在、世界のIT企業のデファクト・スタンダードになっている巨大企業であるマイクロソフト、アップル、グーグル、フェイスブックなどは、すべてアメリカから始まったベンチャーだ。一方、日本発でそのレベルに到達したベンチャーはほとんどない。

 

まずITの技術面の勉強をされた方は分かると思いますが、際立って英語が主流ですよね。この点につき、日本から世界で活躍できるITベンチャーが登場するのは、非常に難しいと思います。

CEOなど経営陣に海外経験者を置くにしても、現場には日本労働者が多数を占めることになるでしょうから、仕事上で生じる様々な感覚を共有するのは困難だと思います。

この困難さは、ベンチャーのメリットである意思決定の敏捷性や柔軟性を阻むでしょう。

 

次にアメリカ発のベンチャーについてですが、グローバルの章で述べているのですから、他の国々にあるベンチャー企業を紹介してほしかった。

 

ヨーロッパやアジアという地域で活躍する企業はあるのでしょうが、それはグローバルに該当しないということでしょうか。

あと、海外向けのビジネスでも地域性って大事ですよね。そうすると、グローバル展開が意味するところも再考しなければ。

全般にわたってグローバルと書かれていますが、アメリカがベースに読めてしまいます。

 

 

最後に、本書を読んで良いと思った箇所を引用します。

大企業と中小企業ではなく、これからはグローバル企業とローカル企業という分け方をするべきである。

 

企業がグローバルもしくはローカルに集中してビジネスを行うのはとても良いことだと思います。

例えば、日本の地方でそこそこ売れた商品を安易に海外で売り出したり、海外でうまくいった事例を自社に置き換えて地方で展開したりしても、成功する見込みは薄いですよね。

なぜなら、グローバル・ローカルそれぞれに市場があって、そこの分析はグローバル・ローカルのどちらかで成功した時と同程度にすべきですが、多くの場合、成功によって多少なりとも甘くなってしまうためです。

特に、通時的な調査から得られる資料データは、一般ユーザーをユニークユーザーにしやすいでしょう(地域性の話にも通ずる)から、そこが抜けると継続どころか一時的な収益獲得も難しくなると思います。

 

また本書にありますが、東証をグローバル部とローカル部にする、という提案は良くありません。株式投資は限りなく自由な風土を保つべきですし、それに現在の投資家にしてみれば、その部分けこそが各人の投資する指標となっているかもしれませんよね。

 

ちなみに、本書の帯には「政財界やマスコミから大注目」とありますが、だとしたら本書で政策議論や世論を語られては非常に怖いと感じました。

 

 

今回取り上げた本はこちら。

 

 

 

以上。