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雪ん子パースペクティヴ

読むとちょっとタメになるエントリー。

農ある暮らしで地域再生―アグリ・ルネッサンス / 山本 雅之(学芸出版社, 2005.3)を読んだ。

提案と言いながら、理想の押し付け。

 

はろー、yukiです。

 

地方経済のことを知りたくなり、本書を読みました。

こちらです。

 

地方と言うと農業が日常的にある様を想像しますが、皆さんはどうでしょうか。

本書を読みながら、地方=田舎=農業という構図はステレオタイプなのかもしれないな、と思いました。

 

さて、本書はタイトルにあるように、農業を中心とした街づくりについて書かれています。

全4章からなり、ページ数は206と多くはありませんが、本文はアカデミックな書き方がされていますので、読むのには少し時間がかかるかもしれません。

各章を概観すると、次のようになります。

1章:日本の農業の反省

2章:都市部における農業のあり方

3章:地方農業を活性化する方法

4章:農業で都市と地方をつなぐ

 

これまでの不動産は、「資産価値」が重視されていたため、街全体の役割というものが度外視されていました。

家と家がとても遠い距離にある国とは違い、日本は家屋が密集している地域が多い。そのため、家屋ごとではなく、地域の役割により、生活環境を豊かにすることができる。これが日本の地方にあるメリットです。

 

ですが、上にも書きましたように、「資産価値」ベースで家が建てられ、街がつくられては、生活環境など後回しにされてしまう。

すると、より良い暮らしを求めている住民にとっては、生活に不便を感じる機会が生じてしまいます。

そこで本書では「農ある暮らし」という用語で、「生活価値」ベースの新たな街づくりを提案しています。

 

本書が出版されたのは2005年のこと。今よりも10年以上前になりますね。

ところが、本書では、最近耳にするワードが登場します。その一部をご紹介。

農村でも、都市住民を積極的に呼び込み、新たな事業を立ち上げることによって地域を活性化しようという「農村起業」「女性起業」が急速に拡がってきた。

"Uターン"や"女性の社会進出"は都市部での就労を基準にして語られていますが、それらの選択肢の一つとして、「農業」もあったということですね。

 

ファーマーズマーケットは中間業者を排除した消費者直結の売場だから、小売価格を下げても生産者手取りを増やすことが可能だ。

日本の農業衰退に伴い、JAの存在意義が再考されています。

JAがあったために救われてきた農家もありますが、農家も第一次だけでなく第三次のサービス業への着手を迫れる時代になりました。

インターネットがある現代、農家による自家栽培の農産物を直に消費者に届ける環境や機会は、多くなっているのではないでしょうか。

 

そして、最も考えさせられたのが次。

農村コミュニティを再生する現実的なシナリオを描くには、漠然とした農村へのあこがれに望みをつなぐことはできないし、農村を通過するだけの観光客に頼るわけにもいかない。農村に対して都市住民が求めているものを的確に把握し、それを事業として成り立たせるための条件をよく検討することが必要だ。

 

会社を例にとれば、事業の基本は"継続"にありますよね。

引用部の"あこがれ"や"観光客"というのは一時的な収益をもたらすだけで、農村が安定的に生活の質を保てる保証はないわけです。

また、著者は本書の3章にて、都市住民の生活を引き合いに出し、彼らが農村に何を期待しているのかを見極めることが必要だと提言しています。それと、"交流"の重要さも述べながら、「リピーター」についても触れています。

この「リピーター」という存在が僕にとって印象的でした。

 

インターネット界隈を事業にされている方は多いと思いますが、とくにWebサービスは「新規ユーザー」の取り込みと「リピーター」の獲得がキーになっていますよね。

また、本書にも登場する「体験型農業」は、Web業界でいうところの「UX(ユーザー・エクスペリエンス)」や「CX(カスタマー・エクスペリエンス)」です。

サービスであるからには、農業やインターネットの垣根は関係ないということですね。

 

 

さて、「QOL(Quolity Of Life:生活の質)」という用語がありますように、現在僕たちの暮らしは単純な稼ぎでは善し悪しをつけられなくなっています。

「質」を求めるというと漠然としていますが、本書で述べられている生活環境(社会インフラや地域交流、コミュニティ)がそれ。

 

ともなると、地方や農村部では高齢化が現実になっていますので、これを問題視するならば、高齢者が自らコミュニティを形成するなどの行動を起こさなければいけません。

若者がそこに介入する場合、若者と高齢者とが共に満足できるコミュニティが形成されなければいけません。

 

やはり、年齢や世代で区分するのは限界がありますね。趣味嗜好の方が断然柔軟。

今回取り上げた著書でも、「農ある暮らし」というコンセプトのもと、街ひいてはコミュニティづくりが考えられているわけで、社会問題もそうしたソフトの面から再考する時間があっても良いかもしれませんね。

 

 

 今回紹介した著書はこちら。

 

以上。